徒然。。。知らないということ

update:2019/07/03

古今東西、親から子へと受け継がれていくのが「手仕事」…というのは古い考え?

筆者のおばあちゃん世代(明治・大正生まれ)までは、和裁は当たり前。ぞうきんはもちろん、浴衣も羽織りも縫え、例えば、北国育ちの筆者の祖母は編みものも得意でした。

しかし、その次の世代(昭和前期生まれ)は、ちょっと違います。できる人もいますが、「当たり前」ではない世代。幸いというか、筆者の母は手芸大好き人間でしたが、和裁はできない。

そして、筆者世代(昭和後半生まれ)は、手芸好きが数ある趣味の一つで、マイノリティになる恐れすらありました。女性にとって、仕事も趣味も選べる時代になりましたからね(本当の自由ではないにせよ)。手芸より、アウトドアという人だってたくさんいるわけです。

そして、少しずつ、受け継がれていった「手仕事」の糸が途絶えがちになりました。筆者の世代くらいまでは、手芸をやりたいと思えば、母や祖母と一緒に手芸店にいって、最初の道具や本、材料を一緒に選び、教えてもらえば良かったのですが、現在では、1人で一から始めなければならない人も少なくなったのですね。

だから、最近はとにかく「初心者」向け本がやたらに増えています。しかも、一昔前の、「門前の小僧」のように、母の手仕事を見て育った世代の「初心者向け」と、見るのも手にするのもはじめての方のための「初心者向け」ではけっこう違うものです。

これは実際に目の当たりにした実話ですが、とある親子向けの刺しゅう体験教室での光景。
一生懸命、楽しそうに針を刺していた小学生くらいの子の手元をよく見ると、刺しゅうリンクに糸が巻き付いているような。。。その子は針を上から下へと、その動作だけを繰り返していたのです。つまり、針は上から刺したら、次は下から上に戻さなければならないということを知らなかったのですね…衝撃的でした。

筆者は子どもの頃、初めて針を持った時(小学生の低学年くらい?)でも、そんな発想はなかったと思います。いつも母のそばで見ていたから。

…しかし、筆者の兄は違ったようです。小学校の家庭科で、フェルトでコースターを作ったものを持って帰ったのを見て、子ども心に衝撃を受けたのは、今でもよく覚えています。
男の子にしては、きれいに縫っていたと思うのですが、玉留めはすべて表になっていました。
…やはり、兄にも裏表の感覚がなかったんですね。。。

その後、手芸書の編集を仕事にした筆者は、本当の初心者向けというのは、筆者の思いも付かぬところから説明する必要があるものなのだ!と肝に銘じるようになりました。

見て育つ!というのは本当に大事ですね。
今は再び、静かに手芸ファンが増えてきているようです。
途切れがちになった、手仕事、針仕事の糸も次世代につながっていくように願っています。
 

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